食事と体内時計の新たな可能性「時間栄養学」

体内時計と炭水化物

食事を取ると体内に糖分が吸収され、血糖値が増加します。血糖値が上がると、膵臓にあるβ細胞がその変化を感知し、インスリンを分泌します。インスリンは各臓器にあるインスリン受容体に作用し、糖を細胞内に取り込むように働きます。結果、血糖の調節が図られて血糖値は下がり、取り込まれたグルコースは臓器のエネルギーとして利用されたり蓄えられたりします。最近の研究で、インスリンが肝臓や脂肪細胞の時計遺伝子の働きを調節する役割も持っていることが分かりました。

インスリンによる体内時計調節のためにどんな炭水化物をいただくのが効果的なのか、ジャガイモ、トウモロコシ、お米のそれぞれから作った炭水化物を使って、食後の時計遺伝子変化をマウスで調べました。その結果、お米からできたでんぷんが体内時計の時刻をより強くリセットすることが分かりました。お米の実験群は、ジャガイモ、トウモロコシの群に比べ、食後の血糖値上昇が大きく、さらにインスリン分泌も増加していました。

お米由来のでんぷんは、粒子径が小さく消化が良いのでインスリン分泌を増やし、体内時計リセットに効果的だと分かりました。また、効果の弱かった生のジャガイモでんぷんでも、熱処理して消化しやすくすると、インスリン分泌が増加し、体内時計リセット効果も大きくなりました。これらの点から、消化・吸収のスピードがインスリンによる体内時計リセットには大事だということが分かりました。

体内時計に「効く」朝食なら、肉より魚

次に、食後に小腸から分泌され、膵臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を促進する「インクレチン」に関係した内容です。インクレチンにはGLP-1とGIPの2種類があり、間接的に血糖値のコントロールを担っているホルモンです。そのため、インスリン注射とは異なる新しい経路の2型糖尿病治療薬としても注目されています。

魚の油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)は、このインクレチンの分泌を促進することが分かっています。DHA、EPAともオメガ3系の不飽和脂肪酸というもので、健康食品等でも使われている栄養素です。DHA、EPAをマウスの餌に混ぜて与えると、食後の体内時計リセットを強めることを私たちは最近報告しました。「朝ご飯に焼き魚を食べる」ことは、体内時計調節に効果的かもしれません。

また、インクレチンの一種、GLP-1はプログルカゴンというペプチドが分解されてできます。この時、同時に「オキシントモジュリン」というホルモンも分解産生されます。オキシントモジュリンは食後に小腸から分泌され、摂食抑制、つまり食欲を抑えるように働くことが知られていました。このホルモンもインスリンと同様に肝臓などの時計遺伝子の働きを調節することが最近報告されました。

このように、食事による体内時計の時刻調節にはさまざまなメカニズムが関与していることが解明されつつあります。しかし、まだよく分かっていない部分が多いのも事実です。

朝のカフェインは大丈夫、夜のカフェインはリスク高

このほか、体内時計を調節する栄養素としては、カフェインも報告されています。特に、体内時計の周期を延長する効果、つまり約24時間の体内時計を25時間にしてしまう効果を持っていることが、マウスやハエを使った研究で明らかになっています。これらの実験では、マウスやハエは1日のうち好きな時にいくらでもカフェインを摂取できる環境に置かれていました。そこでカフェインを摂取する時刻ごとに、体内時計がどのような変化をするかを、マウスを用いて解析してみました。その結果、カフェイン摂取の時間帯によってマウスの体内時計は早まったり、遅くなったり、異なる変化をすることが分かりました。特に、朝のカフェイン摂取は体内時計に大きな影響を与えないのに対し、夕方のカフェイン摂取は体内時計の時刻を大きく遅らせてしまう効果がありました。

昨年、同じ効果がヒトでも報告されました。その実験では、就寝3時間前にエスプレッソ2杯分のカフェインを飲んでもらい、体内時計を測定したところ、カフェインを取っていない人に比べて約40分体内時計が遅れる結果となりました。カフェインには覚醒作用のあることが知られており、「夜に飲むと眠れなくなる」とよく言われますが、これはカフェイン摂取後すぐに起きる一過性の効果です。

カフェインはこれと同時に体内時計にも悪影響を及ぼしていることが、この研究から明らかになりました。体内時計の延長効果は、覚醒効果と異なり、次の日以降の起きる時間にも影響を及ぼしてしまいます。つまり、朝のコーヒーは体内時計には特に影響はないが、夕方から夜にかけて飲むコーヒーは体内時計を大きく遅らせてしまう可能性があり、注意が必要です。

まとめ

体内時計と食事の関係を分析して効果を見出す「時間栄養学」という学問となります。

食事を効果的にいただくことで体にとってより良いものとして取り入れられることは、不調を和らげるのにも有効と考えられます。

これを薬で行っているのが「時間薬理学」という分野ですが、同じ効果があるものを薬から食事でもできるとなれば治療の可能性はもっと広がるでしょう。

 

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